ニュースレター

第31号 自社株をめぐる税務事案平成28年11月10日

ごあいさつ

こんにちは。永澤です。
1年のなかで春と並び過ごしやすくいい季節の秋をとばして、夏から急に冬になってしまったようです。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今年も年賀状の販売が始まりました。毎年販売が始まったときはまだ早いな…と思っているとあっという間に12月も半ば過ぎになっていて焦ってしまう…を繰り返しているので、今年こそ!早めに用意しようと思っています。

自社株をめぐる税務事案

先頃新聞誌上で、自社株の相続対策に悩む中小企業経営者が、取引銀行から提案された別会社へ自社株を売却するなどの「節税策」を実行したところ、税務署に認められず課税され、国を相手取った訴訟に発展するケースが増えているとの報道がありました。

これらのケースの詳細は不明ですが一般的な問題として、業績が好調な非上場の会社は株式の評価が高くなりがちで、事業承継に問題を抱えています。

団塊の世代が高齢化してきたこの時期に、この点に着目し取引銀行が節税策の一環として、持ち株会社を利用した相続税「節税」スキームを提案するケースが見受けられます。

銀行としては、まず持株会社に多額の株式購入資金を融資でき、次にオーナーに入る株式譲渡代金を生命保険や投資信託などに振り向けさせることで、販売手数料も見込める有望なビジネスとされ、水面下で盛んに提供されているようです。

1.キーエンス創業者の申告漏れ事案

上場企業でも先日の報道によれば、大阪国税局がキーエンス(東証1部・以下K社とします)の創業者(滝崎武光氏)から長男への株式贈与に関し税務調査を実施し、1,500億円超の申告漏れを指摘しました。
滝崎家サイドは、追徴税額(過少申告加算税を含む)300億円超の納付を済ませたようです。

2.事案の概要

①滝崎家には、K社の発行済株式の17%を保有する資産管理会社T社が以前から存在していました。

②数年前に新会社が設立され、その際、株主である武光氏らは、金銭出資ではなく、以前から所有するT社の株式を現物出資する方式を採用しました。

③新会社設立後、武光氏から長男に、新会社の株式が贈与されました。

④相続税財産評価通達の規定に従って算出した評価額で、贈与税の申告を行いました。

⑤大阪国税局は、④の申告に対して、株式の評価が著しく低いと指摘し、滝口家サイドはその指摘を受け入れたものと思われます。

3.国の定めた相続税財産評価通達の規定に従って算出した評価額が否認できるわけ

  1. 相続や贈与で取得した財産の評価額は、相続税法では「取得時の時価」と規定しています。 時価を的確に把握することは容易ではないので、国税庁は「財産評価基本通達」を定め公表しています。 財産評価基本通達では、「時価とは・・この通達の定めによって評価した価額による」としながら、一方で「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と規定しています。 つまり、≪基本的には、この通達に沿って算出した評価額を用いた申告を認めるが、著しく課税の公平を欠く結果となる場合やいわゆる租税回避の場合は別≫と言っているわけです。
  2. 財産評価基本通達の定めでは、上場株式を個人が直接保有する方式から、資産管理会社を経由した間接保有に切り替えれば、評価が下がります。 1段階の間接保有より2段階の間接保有にすればさらに下がります。 新会社設立の必要性が合理的に説明できればよかったのですが、国税局サイドでは「評価の引下げが目的」と見、これを論破できなかったようです。

(森 郁美)

 編集後記

先月のニュースレターでもお知らせしているマイナンバーですが、家主さんなどへの収集のお願いはお出しいただいていますでしょうか。
年末が近くなりますとせわしくなってまいりますのでお早めにご準備いただき、返信がありましたらお知らせくださいますようによろしくお願いいたします。

(永澤祐美子)